味噌よもやま話

アジア人の味のルーツ!?

味噌の味というのは、アミノ酸の味。大豆のタンパク質が酵素によって分解され、アミノ酸を組成するからです。ベトナムには魚を使った醤油に近いものもありますし、それこそ中国にはジャン(トウバンジャンなど)があります。結局、醸造してつくったアミノ酸の味は、アジア人の味のルーツかもしれません。これが、ヨーロッパなら、胡椒などの香辛料やビネガーに行き着くのではないでしょうか。


生活必需品から嗜好品へ

元々、ご飯に密着して食されてきた味噌は、生活必需品といえましたが、食生活の洋風化で消費が低下するとともに様子も変わってきました。

現在、レギュラーコーヒーのマーケットは1兆円を優に超える規模。一方、味噌はといえば1,500億円くらいです。これで味噌が生活必需品というのはもうおかしい。

だから、味噌も嗜好品と考えてもいいんじゃないかと…。嗜好品なら、本当に日常的なものからビンテージものまで幅広く楽しめます。ワインやチーズのように、味噌も原料はどうとか、どこの蔵・産地、そして作り方は…などといったことで選ばれるでしょう。文化的な広がりも出てきます。毎日毎日、本田の味噌を使って欲しいということではなく、もっと味噌を使い分けて、楽しんでいただきたいのです。何でもかんでも、1種類で間に合わせるというのではなく、京料理には京都の白味噌、郷土料理にはその地方の味噌がやっぱりいいですし、その日の気分やご家庭のイベントでいろいろ使い分けていただくのが楽しいのではないでしょうか。


実は今が一番美味しい!

味噌は、昔と比べると今の方が格段に美味しいのです。
日本酒もそうですが、何せ昔よりお米がおいしい。麹をつくる技術も比べようもないほどよくなっている。歴史的に見ても今が一番おいしい時代なんです。

昔は『寒仕込みの土用越し』というのが、いい味噌を造る条件。それは大寒の頃は蔵付き酵母の有用菌だけが使えるからなんです。他の雑菌は働かない。土用の頃は、年中で一番暑いから、熟成・発酵がよく進む。理にかなったやり方です。今では、こうした菌の培養や環境づくりが先端技術で自由にコントロールできます。それも、高精度に。

ところが、老舗の味噌というと、やはり昔ながらの手づくりで、ということになる。もちろん、味噌づくりの主役は麹菌で、ハイテクの部分はあくまでサポートです。

うちの店が江戸時代から今日まで続けてこられたのは、その時代に秀でた技術と生産力があったからです。常に革新があってこその伝統だと思います。